『成瀬君事件』がきっかけとなり、集団デートも2回行い……
 クラスではモブでぼっち、『地味子だった私』をいろいろバックアップしてくれたのが白鳥さんだ。

 親しくなった理由がどうであれ、成瀬君と同じく、白鳥さんは大事な友だち。
 女子の中では、一番彼女と話している。
 たまに遊びにも行く。
 
 ふたりで入ったのは駅前のカフェ。
 私はコーヒー、彼女はレモネードを頼んだ。

「ゆい」

「ん?」

「あなた、悠真様(ゆうまさま)と、どうなってるの?」

「どうなってるのって……相変わらず『友だちしてる』よ」

 そう、最近も『親友未満』の成瀬君とはずっと一緒に屋上ランチ。

 実は、3回目の集団デート企画が進行中。
 だから、成瀬君と私は相変わらず幹事役なのだ。

楽葉原(らくはばら)』『縦浜(たてはま)』と続き、
今回は女子憧れの夢の国『ファンタジーユートピア』企画。
 
 盛り上がる事は間違いないだろう。

 幹事役は、結構手間はかかる。
 けど引き受ければ、必然的に『参加資格』の特典が発生する。

 次回も女子の参加者が多くなるのは確実だと思う。
 そうなったら、またも「抽選が確定」なのだから。

「それで、白鳥さん、相談って何?」

 私が聞くと、白鳥さんは軽く深呼吸。
 そして、一気に言った。

「私……こくられた」

「えええっ、そ、そうなの」

「告白して来たのは、この前、縦浜(たてはま)で会った他校の人」

「…………」

「私と付き合ってほしいって」

「…………」

「優しいし、カッコいいし、いろいろ気配りしてくれて、すごく良い人。でも、ペンディング、つまり保留にした」

「…………」

「ゆいは当然、知ってると思うけど、私……悠真様(ゆうまさま)……成瀬君が好きなの」

「そ、そうだよね」

「私、ふんぎりつけたい」

「え? ふんぎり?」

 ふんぎりとは……
 白鳥さんが「自分の気持ちにけじめをつける」という事だろう。
 つまり彼女は、成瀬君へ告白するという決意をしたのだ。

「ゆいは、成瀬君とは『友だちどまり』だよね? だから、明日のお昼付き合って。一生のお願い!」

「……分かった」

 大事な友だちの頼みは断れない。
 成瀬君の彼女でもない私に断る理由はない。

 こうして……
 私は成瀬君との『ランチの場』へ、彼に想いを寄せる白鳥さんを連れて行く事となったのである。