運転席の後ろに座る僕の隣には、
 綺月君が座っていて。


 車から投げ落としたくなるくらい
 気持ち悪い笑顔で、僕の肩を突いてきた。




「天音ってさ、最近どうよ?」


「何のこと?」


「とぼけんなって。
 精神安定剤ちゃんにあげるって、
 今朝も、弁当を張り切って作ってたじゃん」



 その話はやめてよ。


 お弁当は作ったけど。

 りんりんは、美術室に来なかったし。




「ついに天音にも、
 好きな子ができたんだね~」


 運転席から飛んできた、
 千柳さんのニヤニヤ声に。


「僕は一生、
 恋なんかしないって言ってるじゃん!」


 運転席のシートを、蹴りとばす。




 千柳さんは今の一蹴りで、撃退できたけど。


 綺月君は、ウザッ。

 相変わらず、僕をネチネチ突こう願望が、
 顔に滲み出ているから。