ステージ袖の壁に、三角座りをしていると。

 会場の時間になって

 ステージ前の広場に
 ファンの子達が入ってきた。



 僕も、そろそろ準備に戻らなきゃ。


 わかってはいるのに、
 心と連動した体は正直。


 ファンから見えない、ステージ袖の壁にもたれ

 立ち上がろうとさえしない、頑固者。




 その時
 頭の上から、生意気な声が。




「天音が、弱ってるじゃん」


 なんで、今現れるかなぁ。



「綺月君、邪魔だからあっち行ってて」


「俺が、こんなチャンスを逃すかよ」


「は?」


「今まで天音に、さんざんいじられて。
『へたれアイドル』って、ボロクソに罵られてさ」


「……」


「抱えきれないほどのでっかい借り、
 今返してやるよ!」



 ま、覚悟はしていたけどね。



 心美ちゃんと綺月君を
 くっつけるためとはいえ

 綺月君の心に
 ブスブス棘を刺し続けたのは

 紛れもなく、悪魔モードの僕だし。