今日の昼休みも

 千柳さんのノロケ話に、
 付き合わされるんだろうなぁ。





 諦めのため息を吐き

 お弁当入りのカバンを肩にかけ、
 教室を出た瞬間。



「天音君、今日も千柳様のとこ?」


「理事長室の前まで、
 一緒に行ってもいい?」


 案の定、女子たちに囲まれてしまった。



 
 は~。


 この子たちが全員

 ツインテを揺らす
 りんりんだったらいいのに。



 な~んて、無意味な願望を抱く
 へたれな自分に、がっかり。






『ファンは神様』

『神様には感謝』



 アイドルレッスンのたび、
 マネージャーに叩き込まれる言葉を
 頭の中で繰り返し。


「僕を送ってくれるの? 
 みんな、ありがとう」


 童話の王子様風に、ニコっ。


 理事長室まで歩き出した。