思い起こせば……


 あっ君に現行犯逮捕された時

 私のことを知ってたよね?


 廃部になった美術部員だって。




 本当にあっ君は、
 私を利用するために、近づいてきたの?




 ショックが大きすぎて

 あっ君のこと

 信じられなくなっちゃった。


 


「すず……」


 勇君の声が、やけに優しく聞こえる。




「天音先輩のことを想って、
 悲しい顔をしてる鈴を。
 放っておけないんだけど」


 私を見つめる瞳が、優しすぎて
 流されそうになる。





「女子たちが
 キャーキャー言いまくってるアイドルに
 勝てるわけないって、
 自分でもわかってるけどさ」


「……」


「大事なもの、もう二度と失いたくないから。

 鈴、俺と付き合ってよ」