「人を殺しているときの友達がさ……すごく、楽しそうだった」


皐月ちゃんの言葉の重みがズシリと胸にのしかかってくる。


相手は快楽殺人犯。


たしか、純也の両親はそう言っていたと言う。


笑いながら人を殺すなんて人間の心を持っているとは思えなかった。


「あたしたちと遊んでるときにだって見せたことのない笑顔だった」


皐月ちゃんはそう言うとうずくまるようにして両手で自分の頭を抱えた。


「皐月ちゃん大丈夫?」


そっと背中をなでると、体はひどく震えていた。


友人の豹変ぶりを思い出したのか涙がこぼれだしている。


それでもみんなとはぐれてからずっと1人で逃げ切ってきたのだから、すごいことだった。


「ここで少し落ち着くのを待ったらいい。それからまたどうするか考えよう」


純也がドアから離れて言った。


廊下にはひとまず人の気配がないみたいだ。


「そうだよ。あたしたちも一緒にいるし、きっと大丈夫」


すべての言葉を言い終わる前に、皐月ちゃんが顔を上げていた。


あたしは安心させるためにニコリと微笑む。


ここにいればしばらくは安全だよと言葉を続けようとしたとき、あたしは口を開けたまま動きを止めた。


「皐月ちゃん……」


さっきまで涙を浮かべていた皐月ちゃんの目からスッと涙がひいていくのを見たのだ。