殺人感染


☆☆☆

それからどのくらい時間が経過しただろうか。


ロッカーの中でずっと立っているのにさすがに疲れてきたときだった。


「助けて!」


そんな悲鳴と共に女子生徒が教室に逃げ込んできたのだ。


ハッと息を飲んで隙間から確認すると、女子生徒が疲れ果てた様子でその場に崩れ落ちていく。


よほど逃げ回ってきたのだろう、制服も髪の毛もボロボロの状態だった。


しかし、そんな彼女を追いかけて殺人鬼が教室内に入ってきたのだ。


1体や2体じゃない。


10体以上の殺人鬼たちがあっという間に彼女を取り囲んでしまった。


咄嗟にロッカーの戸を開けてしまいそうになり、純也に手を握られて制された。


この状態でロッカーから飛び出すのは自殺行為だ。


わかっているけれど、目の前の彼女を見放すことがどうしてもできない。


小村君のときはその姿が見えていなかったけれど、今度は状況が違う。


どうにかしてあげられないかと歯を食いしばったとき、純也があたしを抱きしめていた。


純也の胸に顔をうずめる形になり、彼女の姿が見えなくなった。


それから両耳をふさがれて彼女の悲鳴も聞こえなくなった。


「純也……?」


「静かに」


純也はそう言ったきり、もうなにも言わなかったのだった。