殺人感染

「だって……」


雪は唇を歪め、その場にずるずるとへたり込んでしまった。


香がその体を支える。


廊下では小村君の悲鳴が聞こえてきて、それはやがて遠ざかり、そして消えていってしまった。


「悲しいと思うけど、でも今は自分の命が一番大切なんだよ」


香の言葉に雪が肩を震わせて泣き始めた。


「うぅ……っあああああああああ!」


悔しさや悲しさを我慢するために精一杯の悲鳴を上げる。


香は雪の体を強く抱きしめた。


あまり大きな声を出していると、ここにあたしたちがいることがバレてしまう。


あたしは緊張で喉がカラカラに乾いていくのを感じていた。


廊下の様子を気にしながらも、雪が早く混乱から覚めるのを願うばかりだ。


「遥、大丈夫か?」


いつの間にか純也が隣に来ていて、声をかけてきた。


あたしは小さくうなづく。


もし廊下にいたのが小村君じゃなくて純也だとしたら?


そう考えて胸が張り裂けそうになる。