「30分で倍に増えるんだもんね……」


呟いたのは雪だった。


雪はさっきまでと同じ場所にうずくまり、自分の体を抱きしめている。


香がすぐに雪に駆け寄り、肩を抱いた。


「あの子たち、大丈夫なのかな」


香の言葉にあたしは首をかしげた。


「A組の教室から見た、子供たちだよ」


言われて、幼稚園の子たちが散歩をしていたのを思い出した。


そういえば香はあの子たちを助けるために教室を飛び出したんだった。


「もしかして、知り合いの子でもいるの?」


聞くと、香はうなづいた。


「イトコの子供がいるかもしれないの。同じ幼稚園の制服を着てた」


香の声は震えていた。


子供が殺されるところなんて見たくない。


あたしは「きっと大丈夫だよ!」と、力強く言った。


外にも出られないとわかった今、なるべく絶望するようなことは口にしたくなかったからだ。


「そうだよね。大丈夫だよね?」


香は雪の肩を抱きながらも、自分の震えを我慢していた。


その姿がなんだか痛々しく感じられて、あたしは下唇をかみ締めた。