殺人感染

「純也……?」


「大丈夫か遥。立てるか?」


視線を前へ向けたまま声をかけてくる。


「う、うん」


あたしはうなづき、どうにか立ち上がった。


純也が来てくれたおかげで少しだけ緊張がほぐれたみたいだ。


でも、幸子は立ち止まらずにこちらへ向けて歩いてくる。


「遥こっち!」


雪に手を掴まれて教室の端まで逃げ出した。


「待って、純也が!」


純也はまだ動こうとしない。


真正面から幸子と対峙する格好になっている。


「幸子、目を覚ませ」


純也が落ち着いた口調で声をかける。


しかし、幸子には届かない。


純也の目の前で立ち止まった幸子が右手に握り締めたカッターナイフを振り上げる。


「逃げて純也!!」


叫んだ瞬間、カッターナイフが振り下ろされる。


純也!


咄嗟に視線をそらしたそのときだった。


「やめろ!」


と先生の声がして、幸子の体は簡単に組み伏せられていた。