ザクッ……。
痛みはなかった。
殺人鬼に感染した子たちが、一様に痛みを感じていなさそうだったことを思い出す。
両腕から力が抜けていき、そのままベンチに腰を落とした。
人が死ぬときってこんな感じなんだ。
ぼんやりと冷静な頭で考えている自分がいる。
純也が視界の中で大きく深呼吸をしているのが見えた。
ありがとう純也。
あたしは純也に殺されるのなら本望だから……。
その時、激しい痛みを感じた。
顔をしかめ、うなり声を上げてうずくまる。
目の前にかかっていた灰色のフィルターはいつの間にか取れている。
「遥。大丈夫か?」
純也がなにかの布をあたしの耳に押し当ててくる。
「うぅ……」
右耳に走る激痛に耐えながらあたしは顔を上げた。
純也は包丁であたしのアザを切り取ってくれたのだ。



