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3組の教室に入り、まず最初にうなだれる。


梨乃がいなくなってから僕は毎回それを繰りかえすようになっていた。


今日も梨乃は学校に来ていない。


いや、まだ少し早い時間だから、もしかしたら来るかもしれない。


期待と絶望を交互に感じながら席に座ると、それを見ていたかのように委員長が近づいてきた。


「坂口君!」


「なに?」


元気な委員長の声を少し耳障りに感じながらも、僕は顔を向ける。


すると委員長が手を伸ばしてきた。


小さな手のひらの上にはピンク色のラッピング袋が納まっている。


「これ、昨日作ったクッキー。よかったら食べて?」


そう言われて僕は瞬きをした。


「これ、僕に?」


「うん。坂口君最近元気ないなぁと思って、気になってたから」


その言葉に僕は驚いて委員長を見た。


僕のことをここまで気にかけてくれているとは思っていなかった。


驚いたままでいると委員長は慌てて「た、ただ、元気になってもらいたかっただけだから! ほら、クラスの雰囲気とかもあるし!」と、早口で言った。


それを聞いてようやく納得できた。


クラスの雰囲気まで気にしているなんてさすが委員長だと関心する。


「わかった。これを食べて元気を出すよ。ありがとう」


そう言うと、委員長はなぜだか頬を赤くそめ、嬉しそうに笑ったのだった。