公園内を見回すとブランコの順番待ちをしている生徒の姿を見つけた。


『次は愛の番だよ!』


不意に梨乃の声が聞こえてきた気がして心臓がドキリとする。


でも今のは梨乃本人の声じゃない。


昔、そういうことがあって、思い出したのだと気がついた。


今から3年前、つまり僕はまだ3年生だった。


その時からここに公園はあって、ブランコもあった。


ブランコと滑り台は特に大人気で、みんな順番待ちをしていたのだ。


『おい! 先に俺に乗らせろよ!』


ちゃんと順番待ちをしていても、そんな風に声をかけてくるヤツっている。


記憶をよみがえらせると、意地悪な声でそう言ったのは啓治だった。


啓治の隣には大夢もいる。


2人は今と変わらぬいやらしい笑みをたたえて、僕の肩をこづいた。


『い、いやだよ……』


当時は今よりも消極的だった僕は2人の存在が本当に怖くて、震える声で答えた。


それを見て更に面白がる2人。


『愛のくせに生意気だな!』


『本当だ! 生意気だ!』


『そ、そんな……』


啓治と大夢の2人にブランコを採られたら、順番が回ってくるかどうかも怪しい。