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蕾が早退したB組は少しだけ静かだった。


樹里の一番の話し相手がいないからだ。


でも、それもほんのつかの間のことだった。


3時間目が終わる頃になると樹里はいつもの調子を取り戻して、一樹たちを巻き込んで騒ぎ始めた。


それはもっぱらあたしの悪口で、あたしは聞こえないふりをして時間をつぶした。


せっかく蕾を早退させることができたのに、これじゃあまり効果がなかったかもしれない。


でも、蕾本人はなかり参っているはずだから、これはこれで成功したといえるだろう。


「お前さ、蕾のこと笑ってただろ」


放課後になり家に帰れると思ったところで樹里に話しかけられた。


見ると樹里は目を吊り上げて怒っている。


なにをそんなに怒っているのかあたしには理解できなかった。


蕾のトイレが長いだけであれだけイジっていたくせに、あたしが蕾を笑うことは許せないみたいだ。


樹里のゆがんだ正義にあたしは内心ため息を吐き出す。


こういうわがままで勝手な性格だから悪い友達しかできないんだ。


「ちょっと来いよ」


樹里があたしの腕を痛いほどに掴んで歩き出す。


あたしはまた引きずられるようにして校舎裏へと移動してきていた。