B組の教室から窓の外を見ていると、蕾が1人で帰っていく姿を見ることができた。


普段の元気を失い、うなだれて、カーブミラーを見ないように最新の注意を払って、ゆっくりゆっくりと帰っていく。


その様子に噴出してしまいそうになり、両手を口に当てて必死で我慢した。


こんな場面を見て大声で笑ったりしたら、樹里たちになんと言われるかわからない。


ま、せいぜい頑張って帰ってよ。


これから蕾の家までどれだけの数の鏡があるかわからない。


そのひとつひとつから逃げて帰らないといけないのだ。


一体何時間かかるだろうか?


想像するだけで愉快な気分になった。


登校してくるときは鏡を意識していなかっただろうが、今はもう鏡に恐怖を覚えてしまっている。


家にたどり着く頃には夕方になっているかもしれない。


あたしはフンッと軽く鼻をならして、自分の席へと戻ったのだった。