その様子がおかしくて思わず笑ってしまいそうになった。


笑いをグッと押し込めて、落ち込んでいるふりを続ける。


「あ、あたしはやめとく」


そんな声が聞こえてきて驚いて顔を上げると、そこには前田さんが立っていた。


樹里たちとは視線を合わせず、あたしとも会わせようとしない。


前田さんはたった一人で、でもしっかりと両足で立っているのがわかった。


樹里は軽く肩をすくめて「ま、別にいいけど」と、軽くあしらった。


樹里の性格ならクラス全体を巻き込んでしまいそうだけれど、前田さんだけは例外みたいだ。


前にあたしが前田さんを泣かせたときも、かばうようなことを言っていた。


そこにどんな関係性があるのか、まだよくわからなかった。


「じゃ、残ったヤツ全員参加でいいよね?」


樹里の言葉に教室内が湧く。


重行がなにか言いたそうにしているが、なにも言えないままうつむいた。


悪口を言えなくしておいたおかげで、思ったよりも楽しいことになりそうだ。


そしてあたしの悪口しりとりが開始されたのだった。