ようやく片づけを終えると、もうホームルームが始まる時間になっていた。


それでも、机から臭ってくる甘い臭いは続いている。


あたしはボンヤリと田中先生の話を聞いて授業の教科書をどうするか考えた。


他のクラスに友人はいない。


かといって教科書もノートもないままじゃ授業を受けられない。


途方に暮れるそうになっていたとき、田中先生があたしの名前を呼んだ。


「染谷。少しいいか?」


そう言って廊下を指差す田中先生に、あたしは席を立った。


教室を出る瞬間誰かに腕を掴まれて驚いて振り向いた。


そこに立っていたのは仁王さんのような顔をした樹里だった。


「余計なことを話すなよ」


樹里は低い声でそう言ったのだった。