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もう少しで復讐は終わるんだから、どうか、誰もあたしの邪魔をしないで。


翌日、そんな気分で家を出た。


下手をすれば伊代の両親があたしの邪魔をしてくるかもしれない。


そんな焦燥感が昨日から胸に渦巻いている。


そうなる前に、復讐を早く終えなければいけない。


「亜里沙おはよー! 聞いてよ、昨日重行と全然連絡取れなかったんだよ」


B組に入ると仏頂面の蕾が近づいてきた。


「あ、そう」


あたしは気のない返事をして自分の席へと向かう。


そこにはまるで執事のように行儀よく立っている一樹の姿があった。


「亜里沙、おはよう」


ぎこちない笑みを顔に浮かべる一樹は誰がどうみても違和感しかなかった。


「そんなに無理しなくていいから。気持ち悪いし」


あたしは一樹を手で押しのけて自分の席に座った。


「あはは。昨日から一樹もちょっと変だよねぇ? まるで重行みたい!」


蕾はさっそく鏡を取り出して前髪を確認しながら言う。


その言葉に一樹は一瞬眉間にシワを寄せたが、すぐに笑顔に戻った。


常に自分の感情を押し殺すのは大変な作業だろう。