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そして帰宅後、母親からまた伊代の家から電話があったと伝えられていた。


「どうしてそんなに連絡してくるの?」


リビングで休憩していたあたしは顔をしかめて聞いた。


「伊代ちゃんは死んでしまったから、気にしているのよ」


「それにしても、あたしのことを気にしすぎじゃないの?」


聞きながら焦りに近い感情がわきあがってくる。


娘の友人が娘と同じ学校に転校した。


ただそれだけなのに、どうしてあたしの周辺をかぎまわるようなことばかりするんだろう。


まさか、なにか感づいているとか……?


そこまで考えて左右に首を振った。


そんなこと、あるはずない。


あたしがあのアプリを手に入れることができたのは、伊代のおかげなんだから。


それを伊代の両親が邪魔するなんて、ありえない。


「どうも、伊代ちゃんが死んだのはイジメが原因だったと思ってるみたいよ。そんな学校に転校して大丈夫ですかって」


そう言われて息を飲んだ。


伊代の遺書はあたしが持ち帰ってしまっているから、伊代の両親は読んでいないのだ。


それでも、あれだけのイジメを受けていたんだから伊代の変化に気がついていたのだろう。


あたしは母親の言葉にそっぽを向いた。


「イジメなんてないよ」


そして短く、そう返事をしたのだった。