一樹はそう言いながら舌なめずりをしている。


それはあたしのアプリを狙って言っていることだと、安易に予想ができた。


あたしはキュッと唇を引き結んで一樹をにらみつけた。


こんな男の彼女になるくらいなら、今すぐ自殺したほうがマシだ。


心底そう思う。


しかし、そんなときに樹里の顔が視界の端に入った。


視線を向けると樹里が険しい表情であたしを睨みつけている。


その瞬間、面白い案が浮かんできた。


一樹からの提案を受け入れてみたらどうだろう?


一樹はあたしの持っているアプリを知っているから、どんなことでもきいてくれる可能性がある。


あたしは目を輝かせて一樹を見た。


その表情の変化に一樹は一瞬ひるんだようだ。


「それ、本当に?」


「あ、あぁ」


「彼女になったら、あたしの言うことをなんでも聞いてくれる?」


その質問に一樹は無言になった。


また眉間にシワが刻まれている。


「断るなら、こっちにも考えがあるけど?」


そういってスカートのポケットからスマホをちらつかせて見せる。


一樹はチッと舌打ちをすると「わかったよ」と、うなづいた。


やった!


あたしはにんまりと笑みを浮かべてその場に立ち上がった。