私は見ず知らずの彼に両手を合わせお願いした。

普段こんなに図々しいことできないけど、今日はこれ以上の遅刻回避策が見つからないもん。


「はぁ? 無理でしょ、どう見ても」

「そんな冷たいこと言わないで。お願いします!」


自転車の後ろを見るとリアキャリアも付いてるし、私座れるじゃないのよ。


「いや、荷台の事じゃなくて。俺の背負ってるバッグ、でかいんですよ。あなたが座ったら俺のバッグで顔を潰しちゃいますから」

「だっ、大丈夫。そのバッグは私が背負うから。ね、それ貸して」


そのバッグをよく見ると、サッカー部が使っているスポーツバッグで、表には背番号と同じ番号が印刷されている。


このバッグを私は良く知っている。


数か月前まで嫌というほど見てきたバッグだ。


小さい番号はAチームで、番号が大きくなるほどBチーム、Cチームと降格して行くんだ。

この人の番号は44番。BチームかCチームなのだろう。