教室に居るのがいたたまれなくなって、俺は逃げるように詩織のクラスの那美ちゃん先輩に会いに行った。

勝手に ”那美ちゃん先輩“ って呼ぶことにした俺は

「那美ちゃん先輩、いますか?」

なんて、言ってみた。

すると那美ちゃん先輩が廊下に出てきてくれて

「あれ? 今日は詩織お休みだよ?」

「知ってます。風邪ひいたみたいで」

「じゃ、どうしたの? 詩織もいないのに3年のクラスまで来て」

「詩織の家に届けるもの、ないですか? プリントとかあれば、俺持ってきますけど」

「今のところ無さそうだけど。何もなくてもお見舞いに行って来たらいいんじゃないの?」

「何か口実がないとお見舞いも緊張するじゃないですか。俺、詩織の親に会ったことないし」

「それなら大丈夫だよ。詩織のお母さんって気さくな良い人だよ。恭介くんならきっと歓迎してくれると思うけど」

「そうなんっすか。教えてくれてありがとうございます」

そうか、詩織のお母さんって厳しくないんだな。

それなら会いに行ってもいいか。