ある日、詩織が教科書を忘れたから見せて欲しいとお願いしてきた。

仕方なく、いや本当は内心喜んで机をくっつけて教科書を二人の机の真ん中で開いた。

肩が触れそうで、ドキドキした。

そのドキドキに耐えられなくて俺はまた机に突っ伏して眠った振りをした。

「椎名くん、授業終わったよ。教科書ありがとう」

そう詩織が言いながら教科書を返してくれた。



翌日も同じ教科があり、昨日貸したその教科書を開くと、

そのページの左下の隅にサッカーボールの絵と、zzz・・・と、眠りを表すローマ字が落書きしてあり、

小さな字で

『サッカー、頑張ってね』

って書いてあった。

俺はもう気持ちを抑えることができなかった。