詩織の通話がなかなか終わらないからラインをした。
≪今さ、詩織んちの前にいる。少し出てこれる?≫
詩織はやっと電話を切ったのか、部屋のカーテンを開けて暗がりにいる俺を探していた。
「恭介?」
そう小さな声で俺の名前を呼ぶ。
俺はチリンと自転車のベルを鳴らした。
詩織はすぐに家から出てきてくれて、
「恭介、どうしたの? いつから待ってた? 寒くなかった?」
そんなに質問してくんなよ。答えられねーじゃん。
「うーんと、詩織に会いたくなったから、来た。詩織が長電話してるときに、来た。・・・・超寒かった」
「もう! 手貸して」
そう言って詩織は俺の手を握った。
「うわ、詩織の手、あったけー」
「恭介の手は冷たい。風邪ひいちゃったら大変だよ。もうすぐ大会なのに」
「ね、ちょっと待ってて」
そう言って詩織が家の中に入って行く。