もうひとつのILoveYou

会社に行くと勝成がやってきた。
ニヤニヤしながら

「アキとの一夜はどうなった?
上手くヤッたか?」

そう平然な顔をして言ってきた。
俺は頭にきて

拓哉は勝成の首をいきなり掴み
ガツーン‼
勝成は吹っ飛び床に叩き落とされた

《《どういうつもりだ━━‼》》

拓哉の怒号にオフィスは騒然とする。
勝成の口が少しキレた。
うっすらと赤い血がついていた。
同僚達が拓哉を止めに入り
倒れた勝成を支えていた。

《《ミクがいる事
知ってただろー》》
グーでもう1発 ガツン‼

「チッいてーな‼」
拓哉の怒りは収まらない。

パンパンと服装を整え勝成は
ハンカチを取り出し口を拭きな
がら、スックと立ち上がった。

「アキちゃんがあんまり健気だから応援したくなっただけだ‼」
勝成はボソッと呟いた。

「俺はミクが好きだし、ミクと結婚する。もう邪魔するな!
これ以上やるなら
お前との縁もここまでた‼」
拓哉は回りに聴こえる声で叫んだ

「いいな‼」


「分かった。
悪かった。」

「勝成、お前がミクを狙ってる事は
知っている。」

「は?な、何勘違いしてるア、ハハハハ…
な、拓哉、お前何誤解してんだ。」

怯む勝成を睨みつけ

「気づかないと思ったか?
お前はミクを見る時
異常な目をしていた。
アキの事をダシにして狙って
たんだろう。」

「うググ、誤解だよ拓哉。」
勝成は嘘は付けないのか拓哉に
睨まれた目を逸らした。

「ミクは、渡さない。‼」
拓哉は勝成に喝を飛ばし自席へと
帰って行った。

💢チッ
勝成の舌打ちは拓哉の背中にも届い
た、拓哉はガツンと床を蹴り
反応を見せる。





♬♪♬♪♬
「拓哉、今日遅い?」

「いや、19:00ぐらいかな?」

「じゃあ待ってて今日私も19:00くらいになるよ。」〃

「Ok、迎えに行くよ。」

「大丈夫、バスで帰るから。」

「じゃあ風呂入れておく。」

「うん。」

何でも無い会話に幸せが溢れる。
アキは会社を辞めたと拓哉から聞いた。
あんなに怒りをぶっけられれば
まあ仕事しにくいよな‼

ミクは少し安心した、あんなに
しっこく迫って来るなら、
いくらガードしていても、難しい。

綺麗な子だったし・・・

「何考えてるの?」
拓哉はミクの顔を見て心配する。

甘いマスクの拓哉はミクにメロメロってのが良く分かる。
クスッと笑うと拓哉は浴室へと
入って行った。


「拓哉ーぁ、ちょっとビール
買いに行ってくる。」

「ちょ、ちょ、まてー‼ミク、
待ってて、直ぐ風呂から上がる
からー」

「え‼ 風呂上がりのビールだからおかしいでしょ‼
意味無いでしょ‼
直ぐ帰るから。」
パタンー

「ミク、ミク、ミク、待て待て待て‼
勝成が、勝成がいるかも
しんない!」

マンションの真向かいのコンビニは横断歩道を渡ればスグ‼

会社を出る時拓哉は勝成に
「ウチ来んなよ。
オレもお前ん家行かねーから。」

必ずそう言っていた。
アイツだけは油断ならない。

「拓哉がシャンプー付けたまま靴を履いて出ようとしていた。」

そこへ呆れ顔のミクが現れる
「だからァ、すぐじゃん。
アイスも買ってきたよ。へへ」

「ミク、1人で出るなよ!
分かった?」
拓哉は不機嫌になりムスッ

「だって、買い置きなくなったんだもん、そこコンビニじゃん。
心配しすぎ!」
笑い飛ばすミクに男の恐ろしさを
ああだ、こうだと教えてやる
ミクはハイハイと軽く聞き流す




そう平凡な日が続いて付き合って一年‼
今年の5月5日、俺達は結婚式をあげた。両親も大賛成‼

少し新幹線の距離の俺の実家にも
ミクは良く顔を出してくれて
家族になろうと努力してくれる。
ミクの思いやりに家族も心良く
受け入れてくれている。

「ねぇ拓哉、おばあちゃんの
誕生日近いよね。
プレゼント買って持って
行こうよ。」

「エッ・・・うん。」

「土曜日、休めるよ
一緒に行こうよ。
おばあちゃん喜ぶし‼」

「うーん来週にしない?」

「えーなんで?」

「じっは、取り引き先の部長の
家に、BBQに呼ばれてるんだ。」

「あら?そうなの?
じゃあ私1人で行ってこようか?
義母さんも、お寺さんの用事が
あるから来てくれると助かるって言われてるし‼」

「うーん、ミク一人で?」

「何心配してるの?
駅までお義父さん来てくれるし
ボーッとしてたら着くし」

「そうか、ありがとうミク
じゃあ頼んでいいか?」

「ふふふ勿論よ。」


この頃になると勝成にも彼女がいて
俺の心配も無くなって来た。
平凡な日が続いて幸せだった。


おばあちゃんの好きな菓子折りを
手土産に新幹線に乗る。
甘い餡子のモナカ‼
1時間程で拓哉の地元に着く
拓哉の家は地元でも有名な名家で
近所付き合いも欠かせない。
ご近所さんにも、お土産を買って
帰省する。

本家でもあるし気難しい人もいる。

しかし義母が、いい人でミクはなるべく義母の手伝いを欠かさない様にした。それは将来拓哉が継ぐ事になる家だからなるべくミクもご近所さんやお寺の檀家さん達と
慣れていた方が良いと思っていた。

最近ご近所さんとも仲良くなって
色々教えて貰う事ばかり。

若奥さん、若奥さんと呼ばれ
仲良くさせてもらっている。
そんな中。

「お義母さーん。
行きましょう。」

「あらユキちゃん。ちょっと
待ってて、ミクちゃん、ミクちゃん」

「はいお義母さん。」

ちょっとふっくらした義母は
にこやかで元気が良くて逞しい
そんな義母が、身長157(推定)
ぐらいのスッとした鼻、目の
涼し気なストレートヘアーの子を
紹介した。

普通な顔、良くもなく悪くもない。
いや、嘘‼ちょっと美人の類にはいる。

「ミクちゃん、この子ユキちゃん。
私の事、義母さんって呼ぶけど
意味ないのよ。
あだ名みたいなものだから・・・」

ニコニコして義母はミクに誤解を
招く前に説明してくれた。

「あ‼ そうなんですね。
ユキさん拓哉の嫁のミクです。
仲良くしてくださいね。」

そんなミクにマウント取るように
彼女は、いけ好かない笑いをうかべた。

「ああ〜、あなたが はるか
年上のぉ・・・
皆同級生で噂になってますよ。

拓哉が行かず後家もらったって
ぷぷぷ
皆好き勝手言って面白がってるんです。」

傍で聞いていた義母はミクが気に
いっていたからか声を荒らげた。

「まあムカッ‼ 誰?が、ミクちゃんは年上ではあるけど、私達が
気に入ってるんだから
ミクちゃん気にしちゃダメ‼

ユキちゃん皆に言っときなさい
変な噂立てるな‼ってね‼」

「うふふ、はい。
お義母さん。」

ユキはニヤニヤしながらミクを見て聞いて来た。
「拓哉来てないんですか?」

「はい部長さんの用で・・・」

「そっかあ残念‼ 会いたかったなぁ」

「え?」
「今度同級生で飲みましょう
って言っておいてね!
若い人だけでね‼
ミクさんは悪いけど若くないし
ヌキでw。」

「あ・・・へ?まあはい。
伝えま・・・す。」

奥歯に物が挟まった言い方は
悪意がある。

「ミクちゃん、あの子
ズバズバ言うけど気にしないでね。」

ムツとした顔をしていたのだろうか?
義母さんに迄、気を使わせてしまった。

歳の差を付かれると微妙に
反応してしまう。
義母と、ユキと名乗る女性は、彼女の
軽自動車に乗ってお寺へと向かった。

もうすぐ春のお彼岸だからお寺も
忙しい。
2人はそそくさと出て行った。