「……ごめん」

「え?」

「だから、ごめんって言っているのっ」



突然『ごめん』と言った瑠衣くん。

なにが『ごめん』なんだろう。

私、瑠衣くんに謝られるようなこと、されたっけ?


思い浮かぶのは……。



「ああ。私の作ったご飯を食べなかったこと?」



それは仕方ないと思うし、特に気にも留めていなかったから、謝らなくてもいいのになぁ、なんて思っていると。

隣から呆れたような視線を感じた。

瑠衣くんを見れば『バカなの?』って、目が言っていた。



「だから。巻き込んでごめん、って……」



語尾に向かって小さくなる言葉。

そこまで言われて、瑠衣くんがなにに対して謝っているのか分かった。



「僕が彼女のフリを頼まなければ、こんなことにならなかった」



膝を抱えて、ぎゅっと握り締めているこぶしは震えている。

そんな姿を見たら、瑠衣くんを責める気にはならないし。

そもそも、瑠衣くんが悪いとか思っていない。


私は、そっと瑠衣くんのこぶしに手を重ねた。

驚く瑠衣くん。