「奈々なら、大丈夫だ」



そう言って、祐樹先輩は私の頭にぽんっと手を置いた。


“奈々”


祐樹先輩に初めて名前を呼ばれた……。

微笑む祐樹先輩の顔を見たら、安心感が生まれた。

私も笑顔を返す。

ぽんぽん、と祐樹先輩は頭を撫でてからキッチンを出て行った。


祐樹先輩の手のぬくもりが残っている。

……この寮生活で不安だったのは、瑠衣くんのことだけじゃない。

祐樹先輩と、普通に話すことすら出来ないと思っていた。

だけど、今日。

祐樹先輩は私に話しかけてくれた。

だから、私はもっと話したいと思った。

それが人間関係を築いていく、ってことなのかな。


……祐樹先輩にはかなわないや。



「決めたっ!」



私はキッチンを出て、リビングでくつろいでいる彼らの前に立つ。