皎天よりあの子は遥か



次の日、みよは学校に行った。

約束とはとうてい言えない半ば強引に言わされたようなものだったのに、行かなきゃって、死ぬことができなかった。

思えば覚悟した気になっていただけなのかもしれない。後からそう思った。



──── 楽しいことやうれしいことを探そうとするからくるしくなるんだよ。


蒼井今日子はその日以降学校に来ることもなく、家も引っ越し、消息を絶った。



あれから8年ほど経った今でも、なんとなくあの日のことを思い出すことがある。

死のうとしていたみよが、生きていくことを選択した日。誰かに初めて名前を呼ばれた日。勉強を解くことが楽しかった日。


不思議だよね。この人生でわすれられない日ができるなんて思わなかったよ。



きっと彼女はもう死んでるんだろう。そう思うと余計に、覚えてないとって使命感のようなものが芽生えてしまって。


それなのに彼女は本当に突然なひとだ。



「久しぶりだね美宵ちゃん。元気そうでよかった」

「え、なんで生きてるの…?」

「何それ。村上先生からこちらのクリニックに勤めてるって聞いて」


死んだとばかり思っていた同級生が職場にやってきた。

受付を通ってきたからオバケではない。優等生らしい笑顔も健在だ。ぜんぜん変わってない。


「死んでなかったんだ」

「それはこっちの台詞だよ。生きてたんだね」


黒くて深い瞳がこちらを向く。嫌味っぽい言いかたにため息をついた。