世界でいちばん 不本意な「好き」




「それにしてもきらいってひでーな」

「本当のことだし」

「まあでもこれも役得か」

「そういうポジティブなところが本当にいや!」


芸能人ってこうなの?それとももともとの性格?どうやったらそんなふうに生きられるんだろう。

わたしとは、ぜんぜんちがう。

生きてきた世界も、周りも、なにもかもが、きっと。


「アリス。何かあったときも、何もないときでも、泣きたいときは泣いていいんだよ。今日みたいに転びそうなときとか、いつでも駆けつけるから」

「は……泣きたいとき、なんて…今日だって、か、勝手に来ただけじゃない」



あっこの久野史都ノートに書かれていそうな、嘘みたいな本心を、いとも簡単に声にする。

それも、ステージ上から見た無数のペンライトに向けてでもなく、テレビの先の視聴者でもなく、目の前のちっぽけなわたしにだけに聴こえる音で。


──── いつも、何もないよ。何もない。あの日からずっと。



「出会ってなかったころはむずかしいけど…これからは絶対ひとりにしない」


そんなことしてもらうような関係じゃない。
それに、今、このひとはうそつきだ。

1年後には、いるべき場所へ帰るひと。戻る場所があるひと。居場所があるひと。


思わず笑ってしまった。

無理でしょってばかにしたいような気持ちと、泣かないしって気持ち。



それから、少しだけ、


「アリスが笑ってるの、はじめて見れた」


うれしくてたまらない、なんて不本意な気持ちが混ざり合って、うまく文句も言えなかったよ。