それにしても、本当に背が高い。背伸びを精いっぱいしたって肩も並べられないのは少しくやしい。
なんでわたし、いつも、このひとに張り合いたいような、並びたいような気持ちになるんだろう。
「こんなところで何してるの」
学校も駅も反対方向。にぎわう場所なんてないようなところ、このひとには似合わない気がする。
「ショーマくんが出るライブのチケット2枚もらったんだ。来月すぐだって。アリスがシフト出す前に誘ってこいって言われて。…や、これは、言い訳です」
「言い訳?」
「どうしても今日中に仲直りしたくて、ショーマくんにバイト先聞いた」
こどもみたいに笑うし、いつもしつこいし、めんどくさいし、冷やかしなのかと思うくらい詮索してくる。
それなのに、どんな時も瞳だけは真剣なところが、逃げ場を無くしてくる。
茶色のきれいな桃花眼。
反らしたいのに、時々反らせないときがある。
「…言い過ぎたし、子供じみた態度、とった。ごめん」
先にそう言うと彼は突拍子もない言葉を聞いたみたいな表情を浮かべた。
なんなのその反応。わたしだって自分からあやまることだってできるんだよ。
「だけどわたしは、何を言われても、あんたがどう考えてても、自分の考えかたを変える気はないよ。できることなら平和に生きたい。面倒なことはいや。だから猫はかぶるし、角を立てるかもしれない本音は言わないし、知られたくないことは聞かれても絶対に言わないから」
「うん。アリスは、他人を傷つけたくないひとなんだな」
「…あのさあ、そういうところがいやなんだって。わたしのこと、決めつけたように言わないでくれる?癇に障る」
「ひど!俺、本当のこと言ってんのになー」
「それに一番は、誰かにいちばんに愛されたいっていう傲慢な考えがあるんだからね!?」
「なに威張ってんの。アリスってそういうところかわいーよ」
まったくかわいくないでしょ。だめだ。わかってない。もうこっちがあきらめたくなるくらいだ。



