世界でいちばん 不本意な「好き」



「業界でもそうで。評判が悪い人やライバルと共演することもあるし、共演者キラーだって言われてる人の相手役になることもあるし、俺だって万人に受けるわけじゃないからひとつひとつ気にしてられなかったんだよね」

「……」

「そういうのでいえば、俺がいる業界と学校って少し似てるのかも。むずかしいよなー。うわさしてる人たちだって本当に貶めようとしてる人のほうが少ないだろうし、むずかしいなあ」

「むずかしいって……同じにしないでよ」



わたしは、わるくない。

そんな陳腐な言葉でバリアを張りたくなる。

わたしは、わるくない。



それなのに彼は、わたしなんかを庇おうと言葉を選びながら、責める。


「アリスやショーマくんへのうわさはさ、みんなの憧れのまとだからこそなんだろうね」

「あやすみたいな言いかたやめてよ」


何、おとなぶってんの。

まるでぜんぶ見えて理解してるみたいな言葉を並べて。そういうところ、すごくいや。こわい。


「べつにそんなこと、言われなくてもわかってる。そうなるように仕向けてるんだからあたりまえでしょ。うわさなんて気にしてない」

「それなら、いつも、めんどくさいって思う自分を責めてるみたいな顔するよな」

「…っ、責めてきてるのはあんたじゃない…!」


久野ふみととわたしは考えかたがちがう。

べつにわたしだって自分が正しいなんて思っていない。それでいいでしょ。


正しいと思ってないことをしてるわたし、を、責めるのはやめてよ。見ないでよ。近づいてこないでよ。


「バイト戻る。……もうしゃべりかけてこないで」


ショーマや紗依は、どちらかといえば放任で。
ほかの人たちは気づかない。

久野ふみとだけは、出会ってまだ1か月も満たないなかで、まるで自分のことのように意見してくる。


わたしはあんたが演じる予定のキャラクターじゃないっての。


本当にいやだ。

あんなひとはじめてで、どうしたらいいのかわからなくなるよ。