世界でいちばん 不本意な「好き」



「なに座ろうとしてんの。いつもテイクアウトでしょ」

「だって今日はひとりじゃねーし」

「は…」

「あれ、アリス、もう休憩なの?」


無駄に良い低音の声がしたほうを見ると、いつもとがらりと雰囲気が変わった久野ふみとがいた。

制服じゃない。かと言って、とてもイメージしていなかった私服姿。


地味というか…青と水色のチェックのシャツを一番上まで留めてベージュのチノパンにイン。変なロゴが入ったキャップ。黒いリュックを背負って季節外れの厚底靴。なにその格好、ダッサ!!びっくりしちゃった。


「アリスもおどろいた?おれもおれも。学校の外に出るなら着替えてくるっつって寮から出てきた姿がコレ。やばくね?」

「これでも一応変装なんだよ。雰囲気変えるだけで気づかれないんだ」


たしかに、ちゃんと顔を見なければとてもじゃないけどあの芸能人・久野史都と一致しない。


「なるほど…って、なんであんたがここに来るの」

「ショーマくんに誘ってもらったんだ。アリスのバイト先って聞いたら楽しみで楽しみで」


いや…ダッサい帽子の下で屈託なく笑われたってどう反応したら良いかわからないよ。

そんな、楽しみにしてもらうような場所じゃない。ふつうのカフェだし、どこにでもあるのになんなの。


「なんで連れてきたの」

「昨日もきたけどいなかった」


答えになってない。


「昨日は工場のほうだったからね」

「え、シフト変わったの」

「いつまでもショーマと付き合ってたころと同じなわけないでしょ」

「え、ふたり、付き合ってたの?」


久野ふみとが目をまるくして聞いてくる。詳細を知りたそう。何この状況、めんどくさ。