世界でいちばん 不本意な「好き」





左手のくすり指についた傷あとをみて息をつく。

雨の日は嫌いだ。


雨だったからちょうど洗濯物をベランダに出さず、朝から顔を合わさなくて済んだ。

隣の席から投げかけられたおはようにも頷きを返しただけ。

雨だから中庭には行けず教室でだったけどお昼ごはんは一緒に食べた。というより自席で食べて、ショーマと紗依がこっちに来たって感じ。そしてはじめてお肉を断った。ウドのきんぴらだって今日は詰めてくることさえしてない。


ピーマンと茄子の肉詰めはたいそう魅力的だったけど…だけどこれは、完全な拒絶の意思だった。


紗依とあっこには「どうしたの?」と聞かれたけど「なんでもない」と答えた。だって本当に、べつに、なんてことないんだ。

だけど、どうしてかいつもの調子が出ない。


プリントがまわってきたときも取れなくて床にばら撒いてあっこに謝らせちゃったし。


そのままの気分で日曜日を迎え、明日の学校を嫌だと思っていた今現在、カフェのバイトで盛大にカップを割った。

こんな失敗はじめてなんだけど…!

謝ったら「はやめに休憩入っていいよ」と気を遣わせてしまった。申し訳ないなあ。


エプロンだけ外して、店内のはじっこの席に座る。一応お水はもらったけど飲む気にもなれない。


今日も分厚い雲から雨が降る。だからなのか、はたまたべつの理由があるからか、くすり指はずきずき痛い。

この数日はずっと失敗ばっかりだったし…久野ふみととのことなんて、気にしたくないのに。



「あれ、アリス、休憩入るの早くね?」

「…げ」


青髪の男登場。なんでだよ。

わたしが休憩に入っているからタダでトッピングしてもらえないことを嘆いている。

いつもやってあげているだけ感謝してほしいんだけど。