世界でいちばん 不本意な「好き」



まだ出会って3週間。ただ隣の席で、お昼ごはんを食べるくらいにはなって、係は不本意に同じのになった。わたしにとってはそれだけなんだよ。ふみとだってそうでしょ。

ふつう、そうでしょ。



「仲良くなれてよかったって思ってるし、アリスのことなら、もっと知っていきたいって思ってる」


「——— わたしは、知られたくない」



過ごしやすい環境にするために猫をかぶる。

おもしろくなくても笑えるし、思っていないことも平気で言える。


それは、自分のなかを、できるかぎり誰にも見られたくないからだ。


「ふみとはみんなと同じだよ」

「同じ?」

「そう。自分にとって“都合が良いアリス”をつくってるの」


どんな意味で言ってるであれ、まだよく知らない人に好きなんて簡単に言うな。

こっちは、本当は喉から手を出したいくらいだれかからもらいたい気持ちなのに。


「それでいいよ。都合良くつくってもらっていい。わたしはそれを望んでるから」

「そんなわけ……」

「だけど勝手にわたしを知ろうとしないで」



『みんなの気持ちはわからなくなりけど、それでも、久野ふみとに何か嫌なことをされたわけじゃないのにね』

『だって、今のところ、悪いひとじゃないよ』



それなのにわたしが、久野ふみとを苦手な理由。


汐くんとのやりとりも聞かれてる。
冷たい態度だってしてる。

誰かに一番に好かれたい、なんて傲慢な気持ちもバレてる。


もうだいぶ、ほかの人は知らないようなわたしを知られてる。

それなのにどうしてか、久野ふみとのなかのわたしは、いつだって綺麗な気がしてこわいんだ。