世界でいちばん 不本意な「好き」



すかさず口に運んでいる姿を見て、そんなはやく食べなくても誰も取らないのにとくすぐったいような気持ちになる。


「おいしすぎる!ほかのもおいしそう」

「そっちのほうが…」

「へえ、アリスはゆで卵はほくほく派なんだ。はっきりしてるアリスらしいな」


ほくほく派か半熟派で性格が決まるわけないでしょ…。

見透かしたような言いかたはやめてほしい。苦手だ。


無視しよう。久野ふみとのついでに、このやりとりに注目してくる3人の視線も無視。そしてからあげをぱくり。

これは。


「し、塩麹で下味つけてる…?」

「よくわかったねー。しょうゆより好きなんだ」


うん、すごくおいしい。交換してよかった。素直にそう思う。

ジューシーで食べやすいやわらかさ。ぜったい良いお肉を使ってると思う。よく噛んで堪能しよう。次いつ食べられるかわからない。



「よかった。おいしいって顔してる」

「っ、」


覗き込んでくる端正な顔。

その近い距離に、あわてて背中をのけ反る。


「ふみと、近い。いつも近いの」

「そう?メンバーといるときはこんな感じだからつい」

「わたしはあんたのメンバー程仲良くないからね?」

「はは、そりゃそうだよ。ピカロには歴史があるからね」

「いやなに誇らしげに自慢してんの。そういうこと言ってるわけじゃないんだけど」

「そのグラタンもおいしそうだから何かと交換しよーよ」

「え…からあげならいいよ」

「アリスってお肉好きなんだ。明日はしょうが焼きにするけどアリスのぶんも作ってこようか」


な…な…!!

しょうが焼きなんてご馳走、寮でも出ないから2年以上食べてない。