世界でいちばん 不本意な「好き」



「ふみとって料理できるの?」


中庭に移動しながらふと疑問をつぶやく。

くれるって言うけどおいしくなかったらどうしよう。絶対にゆるさない。


「もちろ───」

「もちろんだよ!史都はピカロのなかで料理担当って言われてて、5周年記念の特番でピカロのみんなでグランピングしたときだってほとんど史都が料理してたしドラマや映画の共演者さんたちへの差し入れは手作りケーキなんだよ!いつかレシピ本出したいって20××年6月発売の雑誌のインタビューで言ってたし20××年の全国ツアーのグッズは史都がみんなに作ったサンドウィッチがモチーフのグッズが出たんだよ!毎日お仕事でいそがしいのに料理もできるなんてかっこいいんだよ~」



サンドウィッチのグッズってなに…かわいいの、それ。


ふみとの前にあっこが自信満々に、エピソードやま盛りにご回答。目はハート。

その奥で本人は照れくさそうに頬をかく。なに本気で照れてんの。


「料理なら流とみはくんもできるんだよ。流は麺類、みはくんは高級食材専門だけどね」


麺類と高級食材専門って、なんだそれ。ピカロのメンバー、意味わからない。


「プライベートな史都から流の名前が…」


ミーハーな紗依がすごい反応してる。そういうもの?


わたしとしては一刻もはやく中庭にたどり着きたいものだ。教室でも廊下でも階段でもどこでも注目される。


芸能人ってこんななかで生活してるの?

慣れているのかまったく気にしていない久野ふみとと、ほかの人なんて目に入らないらしい紗依とあっこ。その気にしなさ、わたしにも分けてほしい。