世界でいちばん 不本意な「好き」



あっこがそっと席を立ち、くるりとこっちを見る。

その足はじわりじわりと久野ふみとに近づき、おそるおそる、みたいな様子で俯いていた顔を上げた。



「あ、あ、あ…の…」


いつもの可愛らしい声が震えている。


「うち、ふ、史都が、デビューする前から大好きで…ファンで、ずっと大好きで…」


考えようによっては、ちょっと、幸せなことなんじゃないかな。

ほかのファンの人とちがってあっこは直接伝えられる。なんて、他人事かな。


「だから戸惑っちゃって…嫌な態度、とってごめんなさい…っ」


ぎゅうっとぐーに握った手を思わず包み込む。

大丈夫だよ。きっと、大丈夫だよ。



「あっこ」


低い、けれど聴き取りやすい声。


「ずっと応援してくれてありがとう。突然おどろかせて、本当にごめんね」


高い背を腰から折って背の低いあっこと同じ目線になる久野ふみと。


「もしよかったらこの1年間、クラスメイトとして…あわよくばこれから先は友達として、仲良くしてくれないかな」


そっと手を差し出してくる。

えっと…残念だけどそれは……


「握手なんてできない!!むり!!」


ほらね。距離が近すぎるんだって。ファンの目線に立って考えることはできないらしい。

代わりにわたしがぎゅっと抱きしめておく。よくがんばったね。


「でも…今日から、一緒に食べよう。うちらもアリスと食べたいし」


かわいい!


ん?

今日“から”?


「うん、ありがとう」


えええ。なんでそんなことになっちゃったの?不本意だ。

ぜんぶからあげのせい。