世界でいちばん 不本意な「好き」



しっとりも好きだけど、王道はかりかりだと思ってる。それをダシにされたら断れないよ。

食べることは好き。食べることは大事だとも思う。だけどそれ以上にお金は大事。


おすそ分けしてもらえるものはもらう。たとえそれが、久野ふみとからであってもだ。


「やったー。どこで食う?食堂?」

「いや食堂はもう勘弁して」


なるべく人目につかないところで座って落ち着いてごはんが食べられる場所…やっぱり中庭しか思い当たらない。


悩んでいるとあっことばちんと目が合った。

すぐさま反らされる。まあ、そうだよねー…史都を連れてきたらゆるさないって、そんな心の声が聴こえてくる。


教室で食べるはもってのほか。怒られないだろうけど音楽室も嫌。

食べる場所でこんなに悩むなんて、これ、久野ふみとが悪いよね。



じろりと見ると「?」ととぼけた顔で見つめ返される。鈍感なのかなんなのか。

こんなことで悩むなんてくだらない。どうしたものか…そう思っていると「いいんじゃないかな」と、女神のような声が聴こえてきた。


「あっこ。アリスが昨日言ってたとおり、あたしたちが勝手にピカロのファンなだけで、何かされたわけじゃないもん」

「でも、」

「こっちが嫌な態度とっちゃ、だめだなって思った。だから中庭来てもいいよって言おうよ」



1年生のころ、数少ない外部受験生で浮いていたわたしに、一番最初に声をかけてくれた紗依らしい言葉だった。


紗依が話しかけてくれなかったら。

一番最初に話しかけてくれたのが紗依じゃなかったら。


わたしの学校生活は今とぜんぜんちがうものになっていたかもしれない。


「紗依、あっこ。わたし、ふたりともごはん食べたいな」


お昼ごはんなんて誰と食べても、ひとりで食べても変わらないでしょ。とは思わない。

久野ふみとが言ったとおり、距離が近づける時間のひとつだと思うから。