世界でいちばん 不本意な「好き」



たまに、自分を見ているみたいで、こわくなる。
とにかくわたしは久野ふみとが言うような人間じゃないんだ。

過度な期待をされたって困る。



「アリス」


わくわく、きらきら。

4時間目の授業の終わりのチャイムが鳴った瞬間、隣の席の異物からそんな視線を向けられ、逃げたい気持ちでいっぱいになった。


「一緒に食べよー」

「…なんで一緒に食べたがるの」

「言ったじゃん。俺、淋しいのだめ」


言ってたけど…26歳の大人が何言ってんの。ひとり行動できない人って苦手。


「それにごはん食べるときって、距離が近づける時間って感じしない?」


だから嫌なんじゃん。

このまえ誘ったのはたしかにわたしだけど…やっぱりどうも、久野ふみとと深く関わる気にはなれないんだ。


「俺もアリスを見習ってお弁当作ってきたんだ」


だからなに。


「からあげ弁当。アリスにも分けようと思ってたくさん作ったよ」


頼んでない。

とは、突っぱねられないワンフレーズ。


か ら あ げ。


わたしの大好物であり、それでいて、お弁当にはなかなか入れられないお肉のメニュー。


たまに寮で出るけど人気だから余ることもなくてレアなんだ。

それを分けてもらえる、だと…?

揺れる。揺れ動く。わたしのおなかがからあげを食べたいって叫んでる。お昼からあのご馳走を食べられるなんて。


「またきんぴらと交換しよ。ふたつ食べてもいいから」


な!
ふたつ!?

想像しただけでたまらない。鶏肉…お肉……無理、食べたい。


「しっとりのやつ?かりかりのやつ?」

「今日はかりかり」

「…っ、……仕方ない」


撃沈。

負けた、からあげの誘惑に。