世界でいちばん 不本意な「好き」



自分のプレミアムさと、今の立場。自覚したほうがいい。

それでもって対策を考えるべきだ。自分を曲げても、過ごしやすい環境を…そのほうがみんなのためにもなる。


幼稚園から大学までだいたいの人がエスカレーターを乗っている。

結束が強くて、歴史が深くて、変化が苦手なこの学園に、途中から入ってくる外部の人間が合わせる。角は立てないほうがいいよ。



「月湖」


下駄箱で靴とうわばきを交換していると呼びかけられた。

わたしのことをそう呼ぶのはこの学園にひとりしかいないから、相手の顔を見る前にため息がふたつほどこぼれる。


その態度が気に入らなかったのか、にの腕を掴まれ、階段の陰まで連れてかれる。振り解こうと思えばできるんだけど、乱暴はできない。


寧音の手は、指は、あの世界の宝物だから。



「月湖、あんたどういうつもり?」

「…学校でそう呼ばないでって言ってるでしょ」

「ショーマとヨリ戻すの?」

「はあ?」


そんなうわさ流れてる?

突拍子もない言葉に苛立ちがこみ上げてくる。だいたい、寧音に何か言われる筋合いだってないのに。


「それとも久野ふみと?人気者はいーね」


そんなこと一切思っていないくせに。

寧音が何を言いたいのかも、何に対して気に障ったのかもわからない。


「寧音とショーマ、別れたの?」

「関係ないでしょ」

「じゃあ、寧音、久野ふみとのこと好きになったから告白なんてしたの?」

「それも月湖に関係ないから」


自分のことは関係ないで突っぱねてくるのにわたしの話は聞こうとするなんて、ちょっとナイよね。