世界でいちばん 不本意な「好き」



今日のお弁当は、お味噌で味付けしたゆで卵と、コンビニバイトで廃棄になったコーンサラダとなけなしのお金で買ったとろけるチーズを使ったミニグラタンと、昨日寮で余ったからもらえた焼きシャケと、ウドのきんぴら。なかなかがんばった。


時間をずらして洗濯物をベランダに出すと、時間をずらしたのに久野ふみとが真向いから手を振ってきた。

もしかして監視されてるんじゃ…と疑いたくなるようなタイミングだ。


「アリス、今日のお昼さー」

「言っとくけど今日は食堂行かないからね」


あんなに注目されながらじゃ落ち着いて食べられない。


「食堂じゃなくて第3音楽室で食べようよ!」

「却下」


音楽室なんて本当は授業でも行きたくないのに。食堂のほうがまだマシ。


「じゃあ屋上は?」

「入れないよ」

「え、本当に?俺がいたころは入れたのになー」

「9年前とは時代がちがうの」

「でもドラマでも屋上でお昼食べるシーン撮ったよ」

「それは架空の世界でしょ。いくらだってやりたいようにできるじゃない」


ちゃんとした言葉で言い返してるはずなんだけど、久野ふみとは納得した表情をしない。

そりゃわたしだって屋上に行ってみたいとは思うけど。



「アリスはいつもどこで食べてんの?教室いないよね」

「中庭だけど…だめと思う」

「なんで?」

「わたしの友達は、ふみとと食べたくないと思う」


あ、また、はっきり言いすぎたかもしれない。

だけど紗依とあっこのお昼の時間を邪魔するわけにいかないもん。


わたしの心配をよそに、久野ふみとは「そっか」と笑った。

自然な笑顔じゃないことはすぐにわかったけど、何も言えなくて部屋に逃げ込んだ。