世界でいちばん 不本意な「好き」



ここのカレーを食べたのって、入学してすぐのころ、みんなに合わせて食べたとき以来だ。だって高いんだもん。


おいしかったなあ。


それこそ、ルーがつやつやしていて、コクがあって、だけどしつこくない。

辛口なんだけど野菜の甘みのおかげでマイルドになっていて。お肉だって、最近ずっと食べてない。


ああ、だめだ。負ける。



「…お肉もつけてくれるなら交換してもいいよ」

「本当?やったー」


メインのお肉を横取りするのに、うれしそうな顔をする。なんで。

戸惑いながらもスプーンを掴んで、欲に負けてカレーを口のなかへ。


「わ…おいしい!」


最高。800円で食べていいの?って思うくらいおいしい。高いけど。


「なー。じゃ、俺にもちょうだい」

「仕方ない。カレーもらったしね」


お弁当箱ごと差し出すと「スプーンじゃ食べれないよ」と笑われる。

たしかに。2度目の仕方ない、で、自分の箸を渡す。


ウドのきんぴらを挟んで楽しみそうに口に運んでる。


そんなに特別なものじゃないんだけどなあ。

芸能人でしょ。コース料理や高級焼き肉、回らないお寿司なんかも食べてきたんじゃないかな。そんなひとがウドのきんぴらを食べたい食べたいって。物好きだ。


「うお!おいしい!アリスすげー」

「なにもすごくないし」

「すげーよ。なあ、また月曜も交換しよ」

「は?ちょっと、なんで月曜日も一緒に食べることになってるの」

「いいじゃん。アリスといると楽しいから付き合ってよ」

「今日っきりの予定なんですけど」

「そこをなんとか!」


ころころ変わる表情。予想もしていない言葉。

これじゃあ落ち着いて食べれもしないから、嫌なんですけど。


どうやらこのひと、ひとりぼっちでお昼を過ごすのが淋しくなったみたい。

やっぱり、一緒に食べようなんて言わなきゃよかったかも。