誘わなきゃよかったかも。これじゃ、きっとわたしにも飛び火する。

ふみとに声をかけた時点で覚悟していなかったわけじゃないけど…やっぱり、今までの2年間で築いてきた地位は捨てがたい。


「アリス、そのきんぴら食べてみたいな」


年齢のことを言うのはどうかと思うけど、思わず26歳が17歳のお弁当ねだってくるなよ。と言いたくなる。


「こっちは予算ぎりぎりでおなかちょっとでも満たせるようにがんばって作ってるんだからあげるわけないでしょ」

「…え!え!」

「え、なに」

「そのお弁当、アリスが作ってるの?」

「そうだけど…」


切れ長の目が絵に描いたようにテンになってる。


「なんで、そんなに変?」


料理しそうなキャラじゃなくね?とか?それとも料理って言えるもんじゃなくね?みたいな感じかな。



「変なわけねーよ。自分の食べるもの自分で面倒見る17歳、かっこいーよ」

「は……」

「アリスの家族が作ってるのかなって勝手に思ってたけど寮だもんな」


今度は青髪の視線が痛い。そんなに、何か言いたげな顔で見てくるなよ。なんで青髪に戻してるんだよ。単純だなあ。

そんなことを言われたら、何も言えなくなってしまう。わたしも単純なのかもしれないと思うと複雑な気持ちだ。



「じゃあ、カレーひと口と交換しよ。アリスが作ってたって知ったらもっと食べたくなった。俺絶対そのきんぴら食べたい」


圧、つよくない?


「ん、どーぞ」


カレーをすくったスプーンの取っ手を向けられる。さては強行突破するつもりだな。

だけど。

さっきからずっと近くで良いにおいがして、その原因はまだ湯気も出ていて。誘惑がひどい。