なるべく費用をおさえて買った食材を、テキトウに焼いたり混ぜたりして詰め込んだだけ。

おしゃれなお弁当じゃない。それなのに、なんか、きらきらした瞳で言ってくる。



「色合いもきれいじゃないし、そんなことないでしょ」


正直、足りてはいないけど。

これ以上入れられるおかずがないんだ。作る余裕というか、お金がない。


「でもこのきんぴらとか、つやつやしてるしおいしそうだよ」


食堂のメニューのなかで一番評判の高い野菜たっぷり、お肉も入ってるカレーを食べておいて、そのせりふ。

雲泥の差だと思うんだけど…。だってそのカレー、800円もするんだよ。


「べつにこんなの…」

「おー、ふみと、アリスのきんぴらに目つけるとかさすがじゃん」


言いかけた言葉は青髪の男のちゃらけた声にかき消された。

肩にまわった腕を振りほどこうともがくんだけどそうするたびに絡みついてくる。ショーマもこのひとも距離が近すぎる。


「ちょっと、」

「このきんぴらはゴボウじゃなくてウド使ってんの」


なーにを知ったような顔して言ってんだか。


「いや、隣に座ってこないでくれる?」

「いいじゃん。ね、ふみと」

「うん。ショーマくんもカレー?」

「そ。おれ、ここではカレーしか頼まないって決めてるから」


決めてるんじゃなくて挑戦できないだけでしょ。ほかにも安くておいしいメニューあるのに。



うわさのふたりが一緒にいる。それだけで注目度が増す。

それなのにふたりとも長い脚を組んでまったりカレーを楽しんでいる。どうやったらそんな鋼のメンタルで生きられるんだろう。


このふたり、案外似ているのかも。

おそろいのカレーを食べる姿を見て息を吐いた。