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14時25分。春休み中の登校日が終わってすぐスクールバッグを掴んで、クラスメイトたちに手を振って教室を出る。
ローファーに足を押し込んで正門まで駆け足で向かえば、すでに彼は待っていた。
「汐くん、おまたせ!」
他校の制服に身を纏う、付き合って4か月の彼氏。
図書館に通っていた時期に出会った男の子。
「アリス、走ってきたの?」
よかったのに、みたいな表情。笑っても困っても眉が下がるところ、すごくかわいいと思っている。
「だってはやく会いたかったし、長く一緒にいたかったから」
そう言うと頭を撫でられて、それがうれしくて腕に絡みついた。
これから流行りの映画を見て、一緒に夜ごはんを食べて、寮まで送ってくれる。
同い年なのに落ち着いた優しい雰囲気の汐くんは、雰囲気だけじゃなく本当に優しい。
一緒に歩くときは手を繋いでくれるし、買い物にも付き合ってくれる。食べたいものは意見を聞いてくれて、必ず送り迎えをしてくれて、かわいいねとか好きだよとか、そういう大事なものもちゃんと言葉にしてくれる。
まさに思い描く、理想のひと。
「汐くん、わたしのこと、いちばん好き?」
わたしはね、この4か月間、きみのことがいちばん好きだよ。
「うん、好きだよ」
「じゃあずっと一緒にいようね」
「うん、いたいね」
めんどくさいと言われたってしょうがない問いかけにも、自然な笑顔で答えてくれる。
わたしが欲しい言葉と態度をくれる。
この手を離したくないな、と、思った。
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