世界でいちばん 不本意な「好き」



なんて…本当はわかってる。

寧音は、たぶん、ショーマとか関係なく、わたしのことが好きじゃない。イヤガラセも、本当はショーマはあまり関係ない。むしろ巻き込んだのかも。

わたしも、ショーマとか関係なく、寧音のことが好きじゃない。



「話したこともない俺になんでって、言うけど…」


たぶん、ピアノだ。

軽いって言われていたけど、淋しかったからだって言われていたけど、寧音は理由なしに人に告白なんてしない。


久野ふみとのピアノ。

憶えてないなんて思ったけど、本当はよく憶えてる。


すごく、すごく綺麗な音で弾く。

丁寧で、繊細で…なかの想いが伝わってくるような。


一度あっこに見せてもらっただけの映像。

歌詞のない曲だったけど、どんな想いが込められているのか、伝わってくる音。耳に残ってる。


あれを寧音も聴いたんだと思う。



「久野ふみとだって、話したこともないファンのひとのこと、大切にしてるんでしょ」

「え……」

「あっこが…あんたのファンだって友達が、そう言ってました」

「……」

「だからって、昨日わたし、寧音とショーマは付き合ってるって言ったのに告白されるとか、隙見せすぎだと思いますけどね」

「え、そうかな…」

「そうですよ。おかげでクラス中大騒ぎ。もっと自分のプレミアムさを自覚したらどうです?」

「…でもアリスは俺のこと特別視しなくない?」

「え、だって、必要ないですもん。…ふつうにすっごく苦手な性格だからはやく席替えしたいですけど、わたしにとっては、ただの、ちょっと顔が良い年上のクラスメイトです」


眼中になかった存在が、隣の席になって、しつこくされて嫌になっただけ。

芸能人だから避けたいわけじゃない。