おかげで静まり返った教室を見て、ショーマが「なに?」と視線で聞いてくる。なに、じゃないよ。
その様子じゃ何も知らなそう。
久野ふみともふつうの顔で席についている。
「とりあえず、鐘鳴るからみんなも席座ろ!」
そう言いながら一目散に自分の席へ逃げた。
「ねえちょっと」
励くん先生が来てから、隣の異物にこそこそと声をかける。
「アリス、おはよう」
「おはようじゃなくって。ホームルームが終わったら静かに教室出てきて」
「え、なに?」
「なんでもですっ」
「ひみつの話?」
なんでそんなうれしそうなの…。
もうなんでもいいや、と投げやりな思いで頷いた。
うわさがどうなのかはなんだっていいけど、あまり、クラスの輪を乱さないでほしい。
そう言ってやらなくちゃ。
励くん先生が教室を出てすぐに、先にわたしが出ると久野ふみともすぐに出てきた。
「ちょっと、…こっち。こっちきて。うしろ、ちょっと離れながら着いてきて」
「なんで、一緒に歩けばよくない?」
そんなだからうわさされちゃうんでしょ。
一昨日廊下で見かけた時も、寧音との距離が近かった。
注目されない場所…木曜の1時間目の音楽室は授業がないことを知っていたから、嫌だったけどそこに入った。
「どうしたのアリス」
「どうしたの、じゃないですよ…!うわさになってる。寧音とあんたがキスしてたって。ショーマがいるのに浮気だって」
「あ。それ…いや、キス避けたよ。でも告白みたいな感じになって…今朝ショーマくんに話した」
…なんだ。そこまでちゃんとできてるのか。
「…寧音、ショーマがいるのに…」
「なんかね、少し前から別れる別れないの話になってたみたい。まあ、それでも、なんで話したこともない俺にって思うけど…」
ショーマ、そんな素振りなかったのに。
寧音も、だったら始業式のとき、睨んでこなくたっていいじゃない。



