世界でいちばん 不本意な「好き」



「…なに?」

「あのさ。…ちょっと、ちょっとだけ、こっち」


こっち、と指さすのは彼の近く。足もと。そこに来いってこと?


なんなの…と思いながら少しだけ寄ると向こうから距離を詰めてきて、さらに屈んでくるからかなり近くなる。

う。みんなの視線が痛い。


未だ浮いた存在のままの久野ふみとは、けっこうしぶとく学校に来ている。


「隣のクラスの佐原さんって、ショーマくんって人の彼女だったよな?」


佐原さんとは、寧音のことだ。


「え、うん、そうだけど…」

「そうだよな。金色の髪の人と歩いてるところ見かけたから、そうだったよなって思って」

「…それがどうしたの?」

「……や、なんでもない。大丈夫だよ、ありがとう」


いや、ありがとうなんて言われても…べつに心配なんてしてないもん。


「また明日ね、アリス」


手を振られる。

振り返さず、ちょっとだけ頷く。


懲りないひとだな、と、振り返さないこっちが悪いことをしているような気分になった。



係の活動は部活より委員に近い。

それなのに部活に入っていない人は必ず係に所属しないとならない決まりになっている。

将来の何かに繋がるようにという意図があるみたいだけど、この学校、そういうところは面倒だったりする。


だから本来ならバイトに回したい放課後の時間。1週間に2度は係の仕事に行く。


「こんにちはー」

「アリスちゃん、今日もよろしくね」

「はい」


それでも活動は少ないほう。ほかの係は先生の雑用のようなもので不定期だったりするからわたしは学童係を選んだ。