…だけど、言いそう。
言いそうというか、思ってそう。
「そりゃ最初は、かっこいいなとか、演技が上手いなとか、そういうふうに惹かれるひとが多いと思うけど…史都がこんなふうにファンのこと大切にしてくれてると、こっちは、大好きになっちゃう」
久野史都にとってのいちばんは、ファンでいてくれるひとたちなんだ。
…やっぱり、アイドルに本当に恋をしたり、そうでなくても追いかけて応援するなんて、不毛だって思う。
けっして届くことのない。
ファンでいてくれるみんな、の内のひとり。
ステージ上から見る無数のペンライトのひとつぶ。
あっこたちは、それでもいいんだ。
それでもいいって思えるようなくらい、久野史都が、同じぶんだけ思ってるんだ。
演技なんかじゃない。
きっとそう。
「これがあっこたちにとっての、あのひとの良さ…」
「そう!すごいでしょ」
「…うん」
だけどわたしにとっては、良い、の類いには入らない。
アイドルとしての彼。
だいたい、スキャンダルが一回もないって、モテないだけなんじゃないの。
なんてひねくれたような気持ちになぜかなってしまう。
だって、しつこいし、めんどくさいし、いちいち思ってることを当てようとしてくるし。
教室移動は大丈夫そうだったから覚えは良いのかもしれないけど。
教科書もちゃんと持ってくるようになったけど。
昨日は言いすぎてるところを止めてもらったし、一緒にいたからか汐くんのことで落ち込む暇もなかったけど。
…けど、やっぱり、あまり関わりたくないな。取り繕えなくなって居心地が最悪なんだもん。



