世界でいちばん 不本意な「好き」



今日のお弁当の献立は、アスパラが安く売っていたからベーコン巻きにしてたものと、甘いたまご焼きと、つくり置きしているウドのきんぴらと、茄子のしょうが焼き。

料理はするけどさほど得意じゃなくて、焼くだけになりがちだ。


おにぎりは昆布の混ぜごはん。三角にするのも苦手でだいたい丸にしてあきらめる。

自分がつくったものではあるけど食べるのは好きなほうだからお昼の時間はひとつの楽しみだったりする。


なにより、勝手にだけど気を遣ってしまう教室を抜け出して気の知れた友達だけと中庭で過ごせる時間は貴重で、お気に入りだ。



だけどその時間も───


「アリスって本当にすごい。なんであんなにふつうに史都と話せるの?」


この新学期がはじまってからは、あのアイドル様のせいでだいなし。汐くんとのことを話そうと思っていたのになあ…。



またこの質問。わたしが甲斐くんの気持ちに応えずアイドルを追いかけるあっこの気持ちがわからないように、あっこはわたしがどうして隣の席の異物を話せるのかわからないらしい。

ふつうに話してるつもりはないんだけどなあ。でも、たしかに、久野ふみととふたりになったときよりは取り繕えているのかも。



「だから、わたしにとっては、ただのクラスメイトだもん。…いや、芸能人でもあるけれど、うーん……なんていえばいいんだろう…」


あっこたちみたいにあのひとをテレビや雑誌で見る機会が少なかったからかもしれない。


「芸能人も、べつに、同じ人間のくくりに入れられてるからかなあ…」

「うー…わかんないよお」

「…あっこと紗依は、久野ふみととふつうにクラスメイトとして関わろうとは思わないの?無理?」

「無理!史都はアイドルだもん!」


あっこの口ぶり、まるであのひとが神様みたい。


「あたしも無理かな…。住む世界が違う人といきなり同じクラスになっても、同じ立場だとは思えない」

「紗依のお母さんたちの病院、大きいから芸能人とかが入院したりしてないの?」

「してるけど…やっぱりピカロは別格でしょ」


そういうものなんだなあ。